大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和50年(ワ)4225号 判決

原告

安岡ハル子

外一八名

右原告ら一九名訴訟代理人

佐伯幸男

浅井利一

被告

右代表者法務大臣

坂田道太

被告指定代理人

東松文雄

外二名

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判〈省略〉

第二  当事者の主張

一  請求原因

1(本件事故の発生)

(一)  訴外亡安岡正光(二等海佐、計測員、以下「亡安岡」という。)他一〇名即ち、機長三等海佐訴外亡伊藤惣吉(以下、「亡伊藤」という。)副操縦士三等海尉訴外亡吉村武久、航空士一等海曹訴外亡正岡泰治、機上整備員二等海曹訴外亡竹内俊三(以下、「亡竹内」という。)、計測員二等海曹訴外亡竹中英清(以下「亡竹中」という。)、機上電子員三等海曹訴外亡平治夫、機上電子員二等海曹訴外亡阿部正(以下「亡阿部」という。)、機上武器員二等海曹訴外亡小野恒郎(以下「亡小野」という。)、機上武器員二等海曹訴外亡平山昌也、機上武器員二等海尉訴外亡末吉今蔵(以下「亡末吉」という。)は、吊光投弾二型(その形状および構造については別紙二のとおり。以下「本件照明弾」という。)のソノブイ投射器による投射実用試験を行うため海上自衛隊第五一航空隊所属P2V―7型四六一四号機(その形状および構造については別紙のとおり。以下「本件事故機」という。)に塔乗中、昭和四〇年七月一七日午後一二時六分頃、千葉県犬吠崎一七三度方向約七〇キロメートル付近の太平洋上において、僚機(同型四六四三号機、以下「四三号機」という。)の本件照明弾の投射を観測後、自ら代つて右照明弾の投射中に機内に火災を起こして海中に墜落し、塔乗員全員が死亡した。

(二)  右実用試験は海上自衛隊昭和三九年、同四〇年度業務別計画に基づき、海上幕僚長が命令し、これを順次航空集団司令、第四航空群司令及び第五一航空隊司令が受けて、第五一航空隊司令が実行計画を立案し、これを実行したものである。

2(本件事故の原因)

本件事故の原因は、本件事故機内で本件照明弾が発火しその光薬部分の高温燃焼のため機内火災が起こり、それが直接の原因となつて本件事故機が操縦困難に落ち入り墜落したものである。なお、本件照明弾の発火は、それがソノブイ投射器に装填された後、安全栓を抜くとき、または抜いてから何らかの原因によつて引金の引索に触れて撃針が作動して生じ、そのため操縦者が煙のため窒息状態に陥つたか、火災のため操縦系統が焼損して操縦不能になる等の事態が生じ本件墜落事故があつたものと推測される。

3(責任原因)

(一)  安全配慮義務違反

(1) 亡安岡他一〇名は海上自衛官であり、被告は公務員である右海上自衛官等に対し被告が公務遂行のために設置すべき施設、器具等の設置、管理または公務員が上司の指示の下に遂行する公務の管理に当つて公務員の生命、および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務がある。

(2) 一般的に照明弾は、その高温を伴う発光に対する危険を防止するため、航空機外に投射後ある程度の時間をおいて発火し、操作上の過誤によつても機内で発火することのないよう十分な安全装置を具備するよう設計されるべきである。ところが、本件照明弾には、格納、運搬時には保護蓋、保護木座、安全栓により安全性を確保できるものの、投射器に装填し安全栓を抜いた後は直ちに撃発可能となり、外部からの衝撃または引金の引索の引張りに対し引金の作動を制御する装置はない。したがつて安全栓を抜いた後、引金の引索が偶然引張られると引金が作動し、五秒の延期薬による延時の後は機内でも発火する。なお、延期薬の機能は光薬が発火するのを延時するだけのもので、発火を制止する意味での安全機能はない。ちなみに、現在用いられている改良型(吊光投弾二型改一。その形状および構造は別紙三のとおり)では、格納、運搬、装填、投射器内を通じて外筒、安全栓が付いており、投射器から投射された後に安全栓が解除され、発火装置用作動傘が開きその張力で引金を引くので、機内で発火装置が作動することはない。

(3) 本件事故につき、被告の行うべき安全配慮義務の具体的内容は、試験飛行当日の教育、訓練、指導等の実施に尽きるものではなく、本件照明弾の発火装置に十分安全装置を具備させ、万一にも機内においては発火しないような構造にすべきであるのにこれを怠り、前記(2)のとおり安全装置の不十分なままこれを使用させ、もしくは前記(2)の安全装置はソノブイ投射器を用いて投下をなすに当つては不十分なものであるから、少なくともソノブイ投射器による投下は行わせるべきではなかつたにもかかわらず、その投下を行うよう海上幕僚長以下が命令し、その結果本件事故が発生したものであるから、被告には右の点において安全配慮義務の解怠があり、その結果原告らに生じた損害につき賠償すべき責任がある。

(二)  不法行為責任(国家賠償法による責任)

(1) 国家賠償法第一条第一項に基づく責任

本件照明弾の投下実験は、前記の被告の命令系統にしたがい行われたものであり、公権力の行使に当る公務の執行である。

右命令に関与した前記の海上幕僚長以下の者は、本件照明弾に前記3(一)(2)記載のとおりの安全装置の不備があり、必要な改良等の措置をしなければ投射器による投射実験をしてはならないのに慢然ソノブイ投射器使用による投射実験を命じた過失により本件事故を発生させた。

従つて被告は国家賠償法第一条一項により原告らに生じた損害を賠償すべき義務がある。

(2) 国家賠償法第二条第一項に基づく責任

本件事故機はその装備機器を含め国の営造物である。事故機塔載のソノブイ投射器に、前記3(一)(2)記載のとおりの安全装置の不備があるため投射器によつて投射してはならない本件照明弾を装填して投射の操作をさせ、その結果本件事故を惹起させるに至つたのは国の営造物である航空機の機器の管理に瑕疵があつたものと言える。従つて被告は国家賠償法第二条第一項により損害を賠償すべき義務がある。〈以下、事実省略〉

理由

一本件事故の発生日時・場所・態様、本件実用試験実施についての命令系統、本件事故の原因はいずれも当事者間に争いはない。

〈証拠判断略〉

二本件事故時の状況について

前記争いのない事実並びに〈証拠〉により認められる事実を総合すると、以下のとおりである。

1  本件実用試験の計画内容

本件の実用試験は、事故機、四三号機の順番で各機が本件照明弾の模擬弾(以下「ダミー弾」という。)六発を二回にわたつて合計一二発、次いで本件照明弾六発を五回にわたつて合計三〇発、ソノブイ投射器(空気圧によつてソノブイを投射するための機器)を使用して高度三〇〇〇フィート(約九〇〇メートル)から投下する計画であつた。

2  本件照明弾の性能・構造等

(一)  型式 吊光投弾二型

(二)  使用目的 夜間航空機から投下し、落下さんにより吊された照明筒の輝きにより、海面または地上を照らし、捜索及び救難の用に使用する。

(三)  構造 発火装置、光薬及び落下さんの三部からなり、これらを長円筒状の紙筒に収めたものである(別紙二のとおり)。

(四)  性能

延時秒時 約五秒プラスマイナス一秒

発光時間 一六〇秒以上

光度 五〇万燭光以上

落下速度 毎秒約2.5ないし3メートル

(五)  要目

全長 約九〇センチメートル

外径 約一二センチメートル

重量 約一〇キログラム(うち光薬重量約五キログラム)

光薬 マグネシウム末、硝酸バリウムを主成分とする。

(六)  発火の要領

(1) 発火装置保護蓋覆いの防湿テープを取り去り、保護蓋及び保護木座を取る。

(2) 投下に先立ち、安全栓を引き抜く。

(3) 引金についている引索を一挙に引き抜く。

(4) 撃針はスプリングの力で雷管を打ち、雷管、速火線、延期薬、補薬、速火線、点火薬、伝火薬及び光薬の順に発火する。

(5) 点火薬に着火した段階で、外筒内のガス圧が高まり(約三五〇ポンド)内筒(光薬筒と落下さん)は底蓋を押し飛ばして放出される。

(6) 放出された落下さんは、開さんして燃焼している光薬等を吊り下げる。

(7) 安全に対する設計上の考慮

本件照明弾は、発火装置保護のため保護用蓋及び木座が取り付けられ、また引金に安全栓が捜入されており、引金自体も上(筒先と反対)方向にある程度の力が加えられなければ引き抜けない仕組となつている。

3  吊光投弾二型改一の性能・構造等

本件照明弾の後で使用されることになつた吊光投弾二型改一の性能・構造等は別紙三記載のとおりである。

右二型改一と本件照明弾の安全装置についての違いは、安全栓を抜いて引索を引つ張るという点は同様であるが、引索によつては発火装置が作動するものではなく、単に保護蓋がはずれ中の作動さん(小型パラシュート)が飛び出す仕組であり、引金はこの作動さんに連結されているので、作動さんの張力によつて(空中で作動さんが開くことによつて)引金が引かれ、発火装置が作動する仕組となつている点である。

4  本件ソノブイ投射器の構造等

(一)  構造 別紙四のとおり

(二)  性能

発射装置 電動及び手動

動力 乾燥空気

作動圧力 七五〇ないし一一〇〇PSI

(但し投射器取扱規則で、八〇〇PSI以下では使用しないよう定められている。)

(三)  作動の原理

電気的に空気弁をコントロールして空気圧によつてソノブイ(本件においては本件照明弾)を発射投下するもので、所要の空気圧はエアコンプレッサー(気蓄機)によつて供給される。

(四)  作動の順序

(1) ソノブイ(もしくは本件照明弾)の装てん

(2) 空気の供給開始(その開始は電動の場合は操縦席の発射ボタン、手動の場合は投射器に設置されたマニュアルは柄の作動による。)によりインデックスピストンが作動し、ピストンフィンガーがソノブイもしくは本件照明弾の上部にかかる。

(3) ピストンフィンガーに圧力が加わり、およそ五〇〇ポンド以上の力が加わると下部のリアクションクラッチが解やくされ、ソノブイもしくは本件照明弾が投射される。

(五)  本件照明弾をソノブイ投射器で投射するに際しての安全策

本件照明弾をソノブイ投射器で投射する場合、撃針の作動(引金の作動)は機外であることが望ましいため、その時期を遅らせるために引索に索長1.6メートル程度の補助索を連結し、その端末をソノブイ投射器の上部に装着する方法が採られていた(この結果、引金は本件照明弾が構外に射出されたころ補助索の張力によつて引つ張られる。)。なお装てん時には右1.6メートル程度の補助索がソノブイ投射器の上部にたばねられていた。

5  本件事故に至るまでの経過

本件事故機と四三号機は前記内容の実用試験を行うため予定地域に向つたが、その途中、本件事故機は四三号機に対し、「本機はコンプレッサーの作動が不良であるから予定を変更して投下試験は行わない。」旨の通報を行つた。予定地域に至り四三号機は予定どうり投下実験を終了したが、その後本件事故機から「コンプレッサーはよくなつたので試験を行う。」旨の通報が入り、本件事故機による投下が開始された。本件事故機は初めに予定どうりダミー弾六発の投下を行つたが、第一弾から第四弾までは時間的に不斉一(予定では二秒間隔による投下であつた。)に投下され、第五弾及び第六弾はほぼ同時に投下された。続けて事故機は第二回めのダミー弾の投下を行つたが、この場合も第一弾から第四弾までは時間的に不斉一であり、第五弾、第六弾は投下されなかつたので、四三号機がその旨を連絡すると、事故機は、「マニュアルで投下した。ICS(機内交話装置)の調子が少し悪い。」旨の応答を行つた。このとき四三号機の機長は事故機に対し「調子が悪いのであれば、試験を次の機会にしてはどうか。」との勧告をしたが、事故機は「了解」と応答したのみであつた。その後しばらくして、四三号機の機長は事故機の後部の窓が赤味がかつた黄色に照らされるのを目撃し、事故機に対し「火災ではないか。」と通報し、事故機は「了解」と答えたが、その後赤味がかつた黄色の炎が事故機内に見え、胴体の水平尾翼の前下方から白煙が目撃されたので、火災である旨を再度事故機に連絡したが、事故機の応答はなく、以後連絡は途絶えた。白煙はその後操縦室の後部にまで及んだように見え、尾翼から一五〇ないし二〇〇メートルの尾を引き、事故機は次第に高度を下げ、約二〇〇〇フィート(約六〇〇メートル)付近で雲に突入して視界から消え、やがて海没が確認された。

6  本件事故の原因

本件事故の原囚は、事故機が海没して回収不能であり、また塔乗員全員が死亡していることから正確には知ることができないが、前記1、2及び4、5の事実を総合すると、次のとおり推測するのが最も合理的であろう。

事故時の状況から、事故機の火災の原因は、照明弾の不時発火であると考えられる(照明弾は光薬としてマグネシウム末を含有しているところ、その発火時の色彩が事故時に観察された炎の色彩に合致していることによる。)。

そして、照明弾の構造からみて、それが自然発火したとは考え難く、撃針(撃針の引金)の作動による発火と推測するほかないのであるが、安全栓の機能から考えると、その解除前に、撃針の作動の可能性はないものといえる。

照明弾の安全栓の解除は、ソノブイ投射器による投射の場合は、投射器に装てん後、投射の直前の段階でされることになつているので、この僅かのあいだに撃針の作動があつたものと考えられるのである。

ところで、照明弾の装てん及び安全栓の解除は機長の命令によることになつているところ、本件では、照明弾の装てんに至る経過について、不明な点がある。すなわち、前記のとおり、事故機が二回目のダミー弾を投射した後(二回目のダミー弾の投射はソノブイ投射器を使用しているが、電動ではなく、マニュアルによつており、第五、第六弾は投下されていない。)、四三号機の機長は事故機に対し投射実験の中止を勧告し、この勧告に対して、事故機の伊藤機長は了解と応答しているのに、その後何の連絡もなく、しばらくして事故機に火災が発生しているのである。この火災が発生するまでの短い間隙を、照明弾の発火という事実と機内の指揮命令の系統から遡つて考えると、事故機の伊藤機長が投射中止の勧告を受け、了解と応答していたにも拘らず、その後の状勢判断の下に照明弾の装てん・安全栓の解除を命令し、安全栓が解除される状態を生じさせたものと考えざるをえないのであり、この点について何故事故機から四三号機に何の連絡もされなかつたのかということが、解明できない疑問として残るのである。しかし、この疑問も、上記の照明弾の装てん・安全栓の解除に至る推論を否定してしまう程のものではないといえよう。

そうすると、照明弾の装てん後、ソノブイ投射器の上部にはその撃針の引索及び補助索がたばねられた状態でおかれたとうかがえるので、作業員が安全栓の解除後の作業中に過誤により撃針の引索・補助索に触れたか、あるいは機内を移動中に過誤により撃針の引索・補助索に触れて撃針を作動させてしまい、本件の不時発火をおこすに至つたものと推測されるのである。

三安全配慮義務について

1  国が海上自衛官であつた亡安岡他一〇名に対し、その公務遂行のために設置すべき施設、器具等の設置、管理または上司の指示の下に遂行する公務の管理に当り、生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務のあることはいうまでもない(最判昭和五〇年二月二五日民集二九巻二号一四三頁参照)。

しかし、右安全配慮義務の内容は、航空隊に属する自衛官の場合には、その職種、地位、状況等によつて異なるが、航空機・施設・器具等や訓練に関し安全性に欠けることのないよう配慮すべきことをいうのであり、事故が機器・弾薬の操作の誤りや偶発的な原因によつて生じたような場合には、いかに公務従事中(特別に危険性を帯びている公務従事中の事故)であつても、安全配慮義務の違反の問題は生じないというべきである。

2  本件においても、被告は航空機による照明弾の投射について安全を保持し危険を防止すべく、照明弾や投射器の構造・性能の安全性、投射方法の安全を保持すべき義務があつたものと解されるところ、原告らは、本件事故原因について、本件照明弾がソノブイ投射器に装てん後引金の引索の作動によつて発火したと推定できることから、本件照明弾は安全栓の解除後は発火可能な状況となるので、これをソノブイ投射器によつて投射する場合には、安全栓の解除後直ちに投下する手投げの方法に比し、安全栓の解除後投射までに時間的に余裕のある点、引索、補助索がたばねられた状態にあり誤つてそれを引張る可能性のある点で危険性が大きく、従つて本件照明弾をソノブイ投射器により投射させたことに安全配慮義務違反があると主張する。

3  そこで原告ら主張の安全配慮義務違反の点について、前記の観点より検討を加えるに、被告は本件事故機の塔乗員に対しては本件照明弾の構造及び機能を周知徹底させ、その操作手順を厳格に定めそれに従つて本件実用試験を行つていたもの(これらの点はいずれも前掲各証拠により認められる。)であるから、そのような塔乗員が安全栓の解除後に引金の引索を作動させることは異常な事態といわなければならない、勿論本件において塔乗員が意識的に引金の引索を引いたと推測するに足りる証拠はなく、誤つて引いたとうかがうほかないのであるが、それにしても安全栓の解除後にあつては、引金の引索には最も注意を払わなければならない筈のものであるから本件事故の原因は、被告の安全配慮義務の違反に基因するというよりも、塔乗員の照明弾の取扱いの過ちに基因するものというべきである。

4 そうすると、本件において被告に安全配慮義務違反があつたとはいいえない。

なおその後採用された二型改一の吊光投弾では、前述のとおり補助さんの取付によつてより安全性が増したものとはいえるが、このことは本件照明弾にかかる安全配慮義務についての前記判断に消長を来たすものではない。

四国家賠償法に基づく請求について

本件において被告は国家賠償法に基づく請求について三年の消滅時効が完成したことを援用して争うところ、被告らは右三年の期間の起算点について、原告らが「損害及び加害者」を知るに至つたのは本件提起後であるから、右期間は未だ完成していないとして消滅時効の完成を否定する。しかしながら、「損害」を知るというのは、損害が発生したことを知ることであり、その損害の程度や数額を具体的に知ることまでは必要でなく(もつとも、損害を知るというのは、他人の不法行為によつて損害を受けたことを知ることであるから、その損害が何らかの不法行為によるものであることを知ることは必要である。)、加害者を知るというのは、加害者の姓名までは知らなくても、調査すれば容易に加害者の住所・氏名などが判明しうるような場合には加害者を知つたことになるというべきところ、前述のとおり、本件事故は自衛隊の職務中の飛行機の墜落事故によるもので、何らかの過失ないし機器の瑕疵が予測されたものであり(本件事故のような場合、事故の原因が調査を経て、不法行為によることが確定しなければ、時効が進行を始めないというものではない。)、またその損害も死亡による損害であるから、本件事故の直後、事故を知ることによつて原告らが右「損害及び加害者」を知つたことは明らかであるから、その時から時効期間は進行を始めているのであり、援用時までに三年の期間が経過していることは明らかである。従つて原告らの国家賠償法に基く請求は理由がない。

五結論

よつて、原告らの請求は理由がないからいずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(山田二郎 西理 内田龍)

別紙及び別表〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例